保険請求

後療料の算定について解説します【整骨院の保険請求】

健康保険で施術をしている柔道整復師にとって、後療料はとても馴染み深いものだと思いますが、あまり深く考えずに算定をしている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回、後療料について基本的な取り扱いと注意点を解説したいと思います。私自身が整骨院勤務で疑問になったこと、厚生労働省や保健所、業界団体の有識者に確認を取った内容ですので、きっと参考になるはずです。

ポイントだけ知りたい方は【目次】をご覧いただければ要点はつかめるかと思います。

後療とは患部回復までの施術行為を指す

「後療」という言葉、わかりにくいですよね・・・

業界団体である公益社団法人 大阪府柔道整復師会では、下記のように記載されております。

後療法とは損傷した組織を回復させる治療法の事をいいます。後療法には大きく3つの治療法(物理療法・運動療法・手技療法)があり、それぞれを相乗的に作用させて、早期に社会復帰させることを目的におこなわれます。
公益社団法人 大阪府柔道整復師会HP より

とてもわかりやすく解説されています。

つまり、初回処置である整復・固定・施療の後に行われるこれら上記療法のことを文字通り「後療」といい、療養費の算定する際には「後療料」ということになると解釈できます。

もし、「簡単に説明してみろ」と言われたならば、「後療とは、患部を正常にまで回復させるための施術のことです。」と答えるかと思います。患者様にとって分かりやすい類似語を挙げるならば「治療(機能回復)」や「リハビリ」に該当します。

後療の算定料金は負傷内容で異なります

後療は、罨法と電療と同じく日々の患者様に施術を行い算定するものですので、接骨院・整骨院経営に大きく関わるものです。

そのため、算定できる料金についてはある程度理解しておきたいです。実際に過去の療養費改定時で数回変更がありますので、療養費改定には注目しておくとよいかと思います。

算定料金は負傷内容によって異なります。下記の表を参考にしてください。

負傷内容後療料
骨折810円
不全骨折680円
脱臼680円
捻挫及び打撲(挫傷)505円

※2019年6月現在。
※関節骨折又は脱臼骨折は、骨折の部に準ずる。
※脱臼の際、不全骨折を伴った場合は脱臼の部に準ずる。
※不全脱臼は、捻挫の部に準ずる。

初検時(初回)には算定できない

後療料は、初めて来院された患者さん(新患)に算定することはできません。初回処置である整復・固定・施療の後に実施される治療法(物理療法・運動療法・手技療法)などのことを文字通り「後療」といい、2回目から算定することが基本的な取扱いとなります。

ただし、 患者さんの来院状況によっては初回の来院時から算定する場合もあります。

転医等の場合は初回から算定する

初回の来院時から算定する場合はどのような時でしょうか?
療養費の支給基準には下記のように記載されています。

既に保険医療機関での受診又は他の施術所での施術を受けた患者及び受傷後日数を経過して受療する患者に対する施術については,現に整復,固定又は施療を必要とする場合に限り初検料,整復料,固定料又は施療料を算定できること。なお,整復,固定又は施療の必要がない場合は,初検料,後療料等により算定すること。

療養費の支給基準

つまり、他の医療機関に受診、または柔道整復による治療を受けた後に来院された場合において初回処置が必要ないと判断される場合は初回であっても後療より開始することとなります。

3部位目以降の算定は逓減がかかる

現在の柔道整復師が取扱う療養費については多部位施術の逓減が強化されており、3部位目の算定については所定料金の100分の60に相当する額により算定します。また4部位目以降の算定については3部位目までの料金に含まれることとなります。

つまり、、、

一例

【捻挫・打撲・挫傷】後療料のみ算定 ※2019年現在

1部位目の算定 505円×1部位=505円
2部位目の算定 505円×1部位=505円
3部位目の算定 505円×1部位×0.6=303円
4部位目の算定 0円(3部位目までに含む)
5部位目の算定 0円(3部位目までに含む)

ざっくりと、「施術する部位の3部位目は算定できる料金が4割減る、4部位目以降は0円」と覚えておけば良いかと思います。

逓減についての詳しい解説は、下記ページをご覧ください。

骨折、不全骨折、脱臼の後療は医師の同意が必要

多くの場合、後療料を算定する負傷は捻挫及び打撲(挫傷)だと思いますが、骨折、不全骨折、脱臼の患部に後療を行う場合には医師の同意を得る必要があります。

療養費の支給基準には下記のように記載されています。

脱臼又は骨折(不全骨折を含む。)に対する施術については、医師の同意を得たものでなければならないこと。また、応急手当をする場合はこの限りではないが、応急手当後の施術は医師の同意が必要であること。

療養費の支給基準

同意の方法は、患者様が得る方法でも柔道整復師が得ても問題ありませんが、同意する医師は必ず患者様を診察した上で同意しなければいけません。そして同意を得た旨を施術録に必ず記載し柔道整復施術療養費支給申請書(レセプト)の摘要欄に付記してください。

同意を得る医師は、必ずしも整形外科や外科などを担当する医師でなくとも問題ありませんが、できるだけ当該負傷の処置を行った医師から同意を得ることで、円滑な療養費請求ができるかと思います。

あまりにも負傷とかけ離れた科目の医師(精神科医、耳鼻科など)からの同意は認められない可能性があるので、注意してください。

後療料を算定できない後療がある?

後療は主に3つの治療法(物理療法・運動療法・手技療法)のことを指す、と解説しました。では、これらの治療法さえ施せば問題なく算定できるのでしょうか?

結論としては、後療として施術するであろう患部に対して直接(あるいは間接)的に効果があり、必要性を明示できる行為を「後療料」として算定することが適切な取扱いと考えられます。
つまり、物療機器だけを施して算定するのが問題なのではなく、また手技療法さえ行えば算定してもいいというわけでもありません。

来院した患者様に、意味なく単にローラーベッドに乗せる行為や、患部への施術には特別必要のない全身の手技療法を後療料として算定した場合は、請求内容の疑義となると考えていただければわかりやすいかと思います。

この書籍は読んでおくべきです

今回の引用でもご紹介している【療養費の支給基準】という書籍は、健康保険で施術を実施している接骨院・整骨院にとって必読書ですので、まだお持ちでない場合はぜひ購入をお薦めいたします。

一般の書店にはなかなか販売していませんので、amazonや楽天ブックスでご確認ください。

さいごに

今回は、後療料の基本的な取り扱いと注意点について解説いたしました。

ぜひあなたの接骨院・整骨院経営にお役立てください。

ABOUT ME
樋口 弘明
柔道整復師。関西圏で合計9つの接骨院・整骨院に勤務し、施術のほか新人教育や療養費請求のレセプト処理、Webや紙媒体による広報など柔道整復に係る様々な事業を経験。現在は会社を設立し、業界に役立つ様々な情報やコンテンツを発信、提供する活動を実施している。