関係法規

なぜ「広告の制限」を逸脱したチラシや看板があるのか?

なぜ「広告の制限」を逸脱したチラシや看板があるのか?

広告の制限についての続きです

広告の制限の内容については、前回の 柔道整復師の広告の制限について確認する で解説しました。

広告の制限は、現場で問題になっているだけでなく、国会でも議題に上がっています。

平成14年11月に「柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する質問主意書」というものがあります。

この質問主意書の中で広告の制限について以下の回答を求めています。

-前略-
五、看板に「各種保険取扱」として「神経痛、腰痛、五十肩」や「肩こり、全身疲労、腰痛」と病名を掲げる柔道整復師の施術所もある。外傷ではないこうした病名は療養費の支給対象となるのか。また、広告表示においても違法性はないのか。

引用元:
柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する質問主意書

※文字の装飾は、当サイトによるものです。

これに対し、当時の小泉純一郎内閣総理大臣は以下のように回答しております。

-前略-
五について
御指摘の「神経痛、腰痛、五十肩、肩こり、全身疲労」が医学的に見てどのような範囲の疾病を指すのか明らかではないが、療養費の支給対象は、急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫並びに急性又は亜急性の介達外力(間接的に加えられる外力)による筋又は腱の断裂であり、これらに該当しない場合は療養費は支給されない。
 また、柔道整復の業務又は施術所に関する広告については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二十四条第一項第一号から第三号までに掲げる事項及び同項第四号に基づき現在厚生労働大臣が定めている事項である「医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)」以外の事項を広告することは、違法である。

引用元:
柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する質問主意書

※文字の装飾は、当サイトによるものです。

前半は療養費の支給可否に関する事項となっていますが、今回のテーマである広告の制限に関する事項についても、当然の回答内容となっております。

聞くのが一番早いです

なぜ全国には、広告の制限を逸脱した内容の接骨院、整骨院が存在しているのでしょうか?

私自身、納得ができないと記事にできませんので、複数地域の行政に問い合わせをして確認をいたしました。

質問内容は以下の通りです。

Q:近年、柔道整復師法の広告の制限を逸脱した看板やチラシなどの広告を目にする。
  あまりにも多くの院で確認することができるがこれはどうしてか?

回答内容は以下の通りです。

A:現状定められた法規では、患者の利便性を損なう可能性があり、または民間の施術
  所との区別を明確するなどを理由に、一定の範囲内で差し支えないとしている。
  当然ながら、自己の有利な事項のみを強調したり、誇大や虚偽の広告となる場合は
  認めることはできない。

※上記内容は、あくまでも問い合わせ当時の担当者の意見です。

つまり、この「広告の制限」に関する問題としては、行政裁量による影響が強いと考えられます。

現在では、当たり前になっている「各種健康保険取り扱い」「○○整骨院」もこれに当てはまるかと思います。

いずれも、本来であれば柔道整復師法第24条に抵触する内容なはずです。

しかしながら「広く認知されており、今になってこれを取り締まることはかえって誤解を招きかねない」として差し支えないという処置が取られています。

今回の問い合わせについて、行政はとても丁寧に対応していただきましたが、一方で「一定数の院に承認したために、後発の開業者だけを否認できなくなった」という印象も受けました。

勘違いしてはいけないのが、上記の行政裁量は「患者にとって誤解を招く、あるいは認知しにくい文言」などに対して取り計らっていただけているものです。

「○○式矯正法」「○○研究会理事」「○○ダイエット」「肩こり」「冷え性」などの掲載は問題外なのでお間違えなく。

患者のためです

何度もお伝えしていると思いますが、すべては「患者の利便性、必要性」が前提にあるということを忘れてはいけません。

行政の患者への厚意により接骨院、整骨院も結果として恩恵を受けている形になりますが、まるで自分達の当然の権利のように取り扱うことは大きな勘違いです。

最近の広告(特にチラシ)には目に余るものがあります。

自身でも、やりすぎかどうかは理解できるはずです。

「本来、広告の制限を遵守することは当然!」という気持ちを忘れずに、患者のために配慮を尽くしていただきたいと思います。

ABOUT ME
樋口 弘明
柔道整復師。関西圏で合計9つの接骨院・整骨院に勤務し、施術のほか新人教育や療養費請求のレセプト処理、Webや紙媒体による広報など柔道整復に係る様々な事業を経験。現在は会社を設立し、業界に役立つ様々な情報やコンテンツを発信、提供する活動を実施している。