保険請求

無病の算定について解説します【柔道整復師向け】

新規患者さんが来院し、身体を評価したが柔道整復が不要だった場合に保険請求できる項目があります。それが無病算定です。今回は、無病の基本的な取り扱いと注意点を解説します。

私自身が整骨院勤務で疑問になったこと、療養費の支給基準に基づいて厚生労働省や保健所、業界団体の有識者に確認を取った内容ですので、きっと参考になるはずです。

ポイントだけ知りたい方は【目次】をご覧いただければ要点はつかめるかと思います。

無傷や無症とも呼ばれます

無病について、療養費の支給基準には下記の記載があります。

患者が異和を訴え施術を求めた場合で、初検の結果何ら負傷と認むべき徴候のない場合は、初検料のみ算定できること。

療養費の支給基準

上記の通り、具体的な算定名称が記載されておりませんので、「無病」という表現は正式な呼称ではありません。「無傷」や「無症」と呼ばれる場合もあります。療養費の支給基準には「負傷と認むべき徴候のない場合」とありますので、無傷が適切かもしれません。

全部まとめて「無病・無傷・無症」と記載すると長くなりますので、ここでは無病で統一しています。実際にはどの名称で呼ばれても同一内容だと理解すれば大丈夫です。

無病の算定料金について

無病については、「初検料のみ算定できる」とありますので、初検料を算定することとなります。

初検料の算定料金は1,460円です。(2019年6月現在)

初検料の詳しい内容は下記ページをご覧ください。

初検料の算定について解説します【整骨院の保険請求】今回は、柔道整復師の保険請求(療養費)の算定項目である初険料の基本的な取り扱いと注意点を解説します。 私自身が整骨院勤務で疑問にな...

無病を算定するための基準

療養費の支給基準をもう一度引用すると、

患者が異和を訴え施術を求めた場合で、初検の結果何ら負傷と認むべき徴候のない場合は、初検料のみ算定できること。

療養費の支給基準

とありますので、新規患者の問診(医療面接及びカウンセリング)をした結果、柔道整復を実施しなかったものについて算定するものとなります。

では、「柔道整復を実施しなかったもの」とは、どのようなケースが考えられるでしょうか?

無病になる・ならない事例

「問診(医療面接及びカウンセリング)さえ実施すれば、何でもかんでも無病としていいのか?」と言うと、そんなことはありません。

イメージしやすいように、3つの事例をご紹介いたします。

無病に関して所属する業界団体によって見解が異なりますので、事前に確認するようにしてください。

事例(1)

外傷性の負傷を疑うべき原因はあるが、症状が確認できない場合
無病の算定 → ○

例えば「買い物のため歩行で移動中、虫(バッタ)を踏みそうになりあわてて体勢を変えるも足を着地する地面の凹凸に気づかず左足首を捻る」という明確な負傷原因があり、接骨院・整骨院へ初回来院したとします。

受傷直後は多少の痛みや違和感があったものの、院に着いた頃には痛みも違和感もなくなっていました。

事情を確認し、術者(柔道整復師)が患側と健側を確認しても差異は認められず、処置(柔道整復)を行う必要性がない判断した場合は、無病として算定できると判断します。

事例(2)

違和感や可動域制限などの状態は確認できるが、原因が不明などの場合
無病の算定 → ○

可動域制限や腫脹(炎症)、圧痛を確認でき、外傷による負傷と評価できるが、負傷原因は不明で長期経過による慢性化の疑いもあると判断したとします。

この場合、療養費の支給として柔道整復師の業務範囲ではあるが、外傷性が明らかな脱臼、打撲および捻挫ではないとして、継続して保険施術は実施できませんが、無病として算定できると判断します。

事例(3)

痛みを訴えているが、柔道整復の業務範囲外を疑う場合
無病の算定 → ×

初回来院した患者さんを問診(医療面接及びカウンセリング)したが、外傷性による痛みではなく神経痛・リウマチ・関節炎・ヘルニアなどの疾患を起因としてものであると判断したとします。

この場合、療養費の支給として柔道整復師の業務範囲外が原因とするため、療養費を適用することはできず無病として算定することはできない判断します。

療養費のルールを意識することが大切

保険請求における柔道整復師の業務範囲について下記の記載があります。

療養費の支給対象となる負傷は、外傷性が明らかな骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと。なお、介達外力による筋、腱の断裂(いわゆる肉ばなれをいい、挫傷を伴う場合もある。)については、第5の3の(5)により算定して差し支えないこと。

また、外傷性とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すものであり、いずれの負傷も、身体の組織の損傷の状態が慢性に至っていないものであること。

療養費の支給基準

このルールは、無病に関しても例外ではありません。無病で算定するのは初検料であり療養費の支給基準から逸脱してはいけないからです。

・医師の元で検査等を行うべきだと判断できる症状のもの
・慢性的な肩こりや筋肉疲労だと判断できるもの

上記に関連する痛みや不調を無病にて算定することは適切ではありません。

「柔道整復を行わないとはいえ、療養費の支給に設けられている初検料を算定するから」と考えるとイメージしやすいかと思います。柔道整復師が取り扱う療養費は、慢性疾患や内科的疾患などを算定することはできないからです。

上記の内容を考慮すると、無病として算定できない患者さんは、念のため提携している医師へ紹介をすることが最も適切な手順だと言えます。

なお、無病の取り扱い時には施術録に内容記載し、柔道整復施術療養費支給申請書(レセプト)の摘要欄にその旨を記載する必要がありますので忘れないようにしてください。

【番外編】無病での取り扱い

ここでは無病についてよくある事例をご紹介します。

複数部位で1部位だけ無病だった場合

初回来院の患者さんの訴えが2部位だったとします。1部位目は施術の必要性がなく2部位目は施術の必要性がある場合、1部位目は無病として算定し、2部位目は通常の保険施術として算定することが可能です。

同月内に無病が複数だった場合

無病の場合、柔道整復施術療養費支給申請書(レセプト)上の転帰は原則として「中止」扱いとなるため、同月2回の無病は算定不可となります。

そのため、仮に同月に同一患者が2回目の初回来院をし、2回目も無病での来院だった場合、この初検行為は自費施術の取扱いとなります。

無病を施術した場合

無病と評価した部位を継続施術することは問題ありません。ただし、保険施術として算定することはできませんので、自費施術として取り扱うこととなります。

初検時相談支援料の算定

無病において初検料のみを算定した場合には、初検時相談支援料を併算定することはできません。

この書籍は読んでおくべきです

今回の引用でもご紹介している【療養費の支給基準】という書籍は、健康保険で施術を実施している接骨院・整骨院にとって必読書ですので、まだお持ちでない場合はぜひ購入をお薦めいたします。

一般の書店にはなかなか販売していませんので、amazonや楽天ブックスでご確認ください。

さいごに

今回は、無病算定の基本的な取り扱いと注意点について解説いたしました。

ぜひあなたの接骨院・整骨院経営にお役立てください。

ABOUT ME
樋口 弘明
柔道整復師。関西圏で合計9つの接骨院・整骨院に勤務し、施術のほか新人教育や療養費請求のレセプト処理、Webや紙媒体による広報など柔道整復に係る様々な事業を経験。現在は会社を設立し、業界に役立つ様々な情報やコンテンツを発信、提供する活動を実施している。