今では当たり前のように取り扱う受領委任払い
健康保険で施術を行っている患者は、毎月の初回来院時にレセプト(療養費支給申請書)に署名をもらう・・・という行為。
これは、療養費の支給を患者から委託を受けて柔道整復師が代わりに請求するための署名、つまり受領委任払いの手続きですね。
柔道整復師にとっては、ごく見慣れた光景となっていますが、どのような仕組みで成り立っているのかを改めて確認してみましょう。
健康保険の給付には、現物給付と現金給付の2種類があります。まずは、それぞれの仕組みから解説してきます。
現物給付、現金給付を確認しよう
現物給付とは、病院等で健康保険証を提示することにより、一定割合の自己負担で診察や治療を受けたり、薬をもらうことができるということです。この診察や治療の行為、薬を支給するという行為を現物と表現されています。言い換えると、本人が受ける治療行為という現物を健康保険に入っていることによって給付されるため、これを現物給付と呼びます。
現金給付とは、例えば患者が接骨院・整骨院で必要だった施術費用の全額を毎回立て替えて、後に保険者から現金で払い戻しを受けるという行為を表現しており、これを現金給付と呼びます。別の表現では償還払いともいいます。
受領委任払いは、現物給付と同等の取り扱い
柔道整復の場合は現金給付に該当しますが、受領委任払いの規定によって現物給付と同等の取り扱いができることとなっています。
簡単に説明すると下記にようなものです。
柔道整復師が保険者(健保組合等)と受領委任の協定または契約を結び、患者からの委託を受けて「療養費支給申請書(レセプト)」を作成し、患者からは自己負担金に相当する金額を受け取り、残りを患者に代わって保険者に療養費を請求するもの。
この取り扱いにより、患者は現物給付と同様の形で柔道整復師の施術を受けることができます。
特別に認められた受領委任払い
療養費の支給は、柔道整復師だけではありません。鍼灸師、あマ指師も療養費の支給です。
しかし、この受領委任払いは柔道整復師だけに特例とされた制度です。
では、なぜ柔道整復師にだけ認められたのでしょうか?
柔道整復師について受領委任払いによる申請が認められてきた経緯としては、整形外科担当の医療機関の配置・医師数の不足していた時代に、治療を受ける機会の確保等の保護を図る必要があったこと、柔道整復師が行う施術の一部には整形外科医の行う医療方式と同一理論によるものがあり、施術を行うことのできる疾患は外傷性のもので、発生原因が明確であることから、他疾患との関連が問題となることが少ないことなどがあり、被保険者保護の立場から受領委任形式による申請が認められてきたということです。
現在は当時よりも医院数は充実しており、今や治療を受ける機会の確保等の保護を図る必要はないのでは?など受領委任の在り方に関する様々な意見が出されています。
この受領委任の制度が今後も認められていくためにも、柔道整復師一人一人が必要性を示し、正しく取り扱うことが重要であると思います。