柔道整復師における「無病」とは?
柔道整復師が取り扱う療養費には支給対象となる負傷があり、急性または亜急性の外傷性の骨折、脱臼、捻挫、打撲または挫傷となるのはご存じの通りです。
上記以外のものは、原則として療養費の請求をすることはできません。
しかし、新規患者の初検時に支給対象外での疾患または症状であっても療養費の請求を認められる場合があります。
それが「無病」という名称での取り扱いです。
無病に対する定義を確認
柔道整復師の施術に係る算定基準の実施上の留意事項には、以下のような記載があります。
患者が異和を訴え施術を求めた場合で、初検の結果何ら負傷と認むべき徴候のない場合は、初検料のみ算定できること。
つまり、新規患者に初回の問診(医療面接)をしたけれど柔道整復を行わなかったものについて算定するというものです。
初検料ですので、1,335円(2013年5月 現在)が算定可能となります。
では、上記の「柔道整復を行わなかったもの」とは、どのようなケースが考えられるでしょうか?
無病に当てはまる内容とは?
「問診(医療面接)さえ行えば、何でもかんでも無病としていいのか?」と言うと、そんなことはありません。
無病に関しては所属する業界団体によって見解が異なりますので、事前に確認するようにしていただきたいのですが、大きく分類すると2つに分けることができるかと思います。
ケース その1:
外傷性の負傷を疑うべき原因はあるが、症状が確認できない場合
例えば「外出先で歩行による移動中、虫(バッタ)を踏みそうになりあわてて体勢を変えるも左足を着地する地面に凹凸があり左足首を捻る」という明確な負傷原因があり、接骨院・整骨院へ初回来院したとします。
受傷直後は多少の痛みや違和感があったものの、院に着いた頃には痛みも違和感もなくなっていました。
事情を確認し、術者(柔道整復師)が患側と健側を確認しても差異は認められず、処置(柔道整復)を行う必要性がない判断した場合が該当するかと思います。
ケース その2:
痛みなどの症状は確認できるが、外傷性の負傷を疑うべき原因がない場合
明確な負傷原因はないが、明らかに可動域制限や腫脹(炎症)、痛みを伴っていることが確認できる場合が該当するかと思います。
例としては、神経痛・リウマチ・関節炎・ヘルニアなどの疾患が原因のものが当てはまるかと思います。
療養費の位置づけを考えて取り扱うことが大切
療養費の支給は、療養の給付の補完的役割として取り扱うことが原則です。
したがって、無病とは負傷原因は確認したが現時点で症状は確認できず医師の元で検査等を行うべきだと判断できる症状のもの、または負傷原因は確認できないものの、ヘルニアなど柔道整復師の療養費の支給対象外の症状だと判断した場合に対して取り扱うと考えるのが妥当であり、単に慢性的な肩こりや筋肉疲労などを安易に無病にて算定することは適切ではありません。
これは「柔道整復を行わないとはいえ、療養費の支給に設けられている初検料を算定するから」と考えるとイメージしやすいかと思います。
柔道整復師が取り扱う療養費は、慢性疾患などを算定することはできないからです。
上記の内容を考慮すると、無病と判断し算定した患者は、提携している医師へ紹介をすることが最も適切な手順ですね。
いずれにしても、無病の取扱い時には施術録に内容記載し、療養費申請書(レセプト)の摘要欄にその旨を記載する必要があります。
同月内の無病の重複算定はできません
無病の場合、療養費支給申請書(レセプト)上の転帰は必ず1日目の「中止」扱いとなるため、同月2回の無病請求は算定不可となります。
そのため、仮に同月に同一患者が2回目の初回来院をし、2回目も無病での来院だった場合、この初検行為は自費施術の取扱いになりますので注意して下さい。
また、無病において初検料のみを算定した場合には、初検時相談支援料を算定することはできません。