一度は経験します
「署名をしていただけないと、全額お支払いいただくことになるのですが・・・」
一時期、問題として大きく取り上げられた白紙委任※などにより、患者の中には療養費申請書への署名を拒否することがあります。
私自身も、患者に署名を拒否された経験があります。とは言っても、現場経験の中で数えるほどでしたが・・・
署名拒否の理由として、大きく2つに分けられるかと思います。
①保険者の「柔道整復師への正しいかかり方」による署名への不安
「保険組合から、レセプトの記載内容を確認してから署名するように指導されているのですが。」と言われることも少なくありません。
保険者が行う療養費の説明は正しいのですが、過大表現な部分もありますので大変です・・・
②見知らぬ用紙に署名をするのが不安
冷静に考えれば、初めて見る怪しげな書類にサインをするのは、誰だって抵抗ありますよね?
警戒心の強い患者の場合、特にこの問題に直面します。
いずれの理由も、用紙が信用できるものであり署名によって制度を取り扱えることを説明できれば、多くの場合納得してもらえます。
※白紙委任に関しては 柔道整復師で問題となる「白紙委任」は本当に問題ないのか? をご確認下さい。
それでも拒否される場合
どんなに受療委任制度(白紙委任問題も含む)の説明をしても、署名拒否の理由①の場合、レセプトに傷病名や施術日数などを記載してからでないと署名してもらえない場合があります。
これも、私自身経験があります。
どうしても署名がもらえないのなら、受療委任制度を取扱うことはできません。
対策としては、当該月には署名をもらわず、翌月に施術日数や金額が書き込まれたレセプトを確認してもらった上で署名してもらう方法が一般的です。
(翌月の来院日によって、申請書の送付は1ヶ月遅れる場合もあります。)
もちろん、署名いただくまでの間は償還払いでの取扱いとなりますので、施術に要した費用の全額(10割分)を立て替えてもらう必要があります。
注意点としては、償還払いによって全額立て替えていただくことへの十分な説明と、署名をもらえた時点で立て替えていた金額の一部(3割負担の場合、7割分)を払い戻す必要があることです。
また、領収書の再発行や窓口日報、施術録の記載訂正など書類整備も必要となります。
「えぇ?こんなに面倒なの?!」
そうです、患者にとっても柔道整復師にとっても大変なんです。
自分を犠牲にしてはいけません
仮に「申請書の内容さえ確認できれば必ず署名するから、受療委任を前提として施術をしてほしい。」と患者に言われたとします。
しかし、署名をいただけていない以上、委任契約が交わされていないわけですから柔道整復師としては無理難題な話しです。
患者の意思を尊重し、署名なしに受療委任を前提に施術を行ったとして、万が一来院が途絶え連絡が取れなくなった場合、より面倒で複雑な手続きが待っていることになります。
柔道整復師は、患者のため地域医療のために勤しむべきではありますが、何もかも慈善によって行動するべきではありません。
現状の法規や制度を理解して正しい線引きをし、お互いにとって正当性のある方法を採用していただきたいと思います。